Wの悲劇 シムの罠3

春の声を聞いても、軽井沢はまだ冬の寒さが残っている。

チョン先生が着くまで、まだ2時間ほどあるから、僕は先生が泊まる「朝日の間」を温めておかないと・・・


「あの・・・・先生が来る前に、あの部屋を温めておいてもらえますか?」

「先生?お泊りになるのは先輩方ではないんですか?」

「はい・・・僕も先輩だとばかり思っていたんですけど、朝、先輩から、泊まるのはチョン先生だと・・・・」


「チョン? その方は・・・・チョンさんとおっしゃるのですか?」


「はい、僕の大学の研究室の副主任をされている、チョン・ユンホ先生です」


「チョン・・・・ユンホ・・・・」

どうしたんだろう? 管理人さんの表情が一気に厳しくなった。

いつもにこやかで穏やかなのに・・・・・。


「チャンミン坊ちゃま、その方は・・・・お医者様ですか?」


「ああ・・・・ご実家は大きな病院だと聞いていますが、先生は病院は継がず、研究室に残ったと聞いてます」


「そうですか・・・・坊ちゃまにお見せしたいものがあります」

管理人さんはそう言うと、「朝日の間」から、一冊の本を持ってきた。


「これは、亡きお嬢様が大切になさっていたものです」


それは、僕も知っている。祖母がいつも話していた、僕に似ているという大叔母様が大切にしていたという本。

僕も子供の頃、何度か見せてもらったから、見覚えがある。

それがどうしたというんだろう・・・・


「坊ちゃま、この本にはある写真が隠されています」

えっ? そんな話は聞いたことが無い。

「それは、おばあさまも知っていたの?」

「いえ、このことは、私の父と、私しか知りません。私の父が管理人をさせていただいた頃、お嬢様からご依頼を受け、細工を施しました」


管理人さんはそう言うと、一番後ろのページをそっと剥がした。

その中には、1枚の古い写真が大切そうに挟まれていた。

これは・・・・・
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チョン先生・・・・いや、似てるけど・・・・先生はこんなに柔らかくは笑わない。

「これ・・・・誰ですか・・・・どうしてこんな写真が、この本の中に・・・・」



「この方は、チョン・ユンホという、医学生でした」

チョン・ユンホ? チョン先生と同じ名前?

「お嬢様が・・・生涯、愛された方、ずっと待ち続けた方です・・・・」


管理人さんから聞かされた話・・・それは、あまりにも悲しい物語だった。



もともと体が弱かった大叔母様は、18歳の秋、風邪をこじらせ、今で言う喘息の発作がひどくなった。

結核も疑われたため、医師の紹介もあり、病院の施設が整っていた軽井沢のこの地に別荘を建て、

翌春、ここに引っ越してきた。

そこで出会ったのが、当時、その病院に研修医として働いていたチョン・ユンホさんだった。


大叔母様とチョンさんは、最初こそ患者と医師という関係だったけど、読書が好きな大叔母様と

本当は小説家になりたかったというチョンさんはとても話が合い、

診察の後に、いろんな作家の話に夢中になり、それが恋へと進むのにそう時間はかからなかったそうだ。


しかし、こんな狭い世界の中、噂はあっという間に父親の耳に入り、チョンさんはある日突然、

東京の大学へと戻るよう言われたそうだ。

当時、大叔母様には家同士で決めた婚約者がいて、こんな噂が相手の家に知られたらと、

父親から病院側に圧力がかけられたようだった。


「チョンさんは、旦那様に何度も頭を下げ、結婚を許して欲しいとお願いしたそうなのですが、旦那様は信頼して任せていた医師に裏切られたと、それはそれはご立腹で・・・・

しかし、お嬢様が結核かもしれないという事で、相手側から破断の申し出があり、

旦那様は熟慮の末、チョンさんが東京の大学病院での研修をしっかりと修了し、

一人前の医師になったら、その時は結婚を許すとおっしゃいました。

お嬢様もチョンさんも、それはそれは喜ばれて、その時に撮ったのが、このお写真です」


「結婚は許されたのなら、どうして大叔母様は・・・・・」


「チョンさんはその夏、東京の大学病院に戻りました。2年間の研修期間を終え、無事に医師になった時には、

かならず迎えにくると、そう固く約束されて・・・・。

しばらくは、チョンさんからも手紙が届いていたのですが、もう卒業も近いとなった頃、

チョンさんが、大きな病院のご令嬢と結婚し、ご実家の病院を再建するという噂が届きました。

旦那様が真相を確かめたところ、確かにチョンさんのご実家である個人病院と

横浜にある大きな総合病院との合併の話が進んでおり、その条件が、チョンさんとご令嬢との結婚だと分かりました。

それを知った旦那様は、お嬢様にチョンさんの事は諦めるよう、諭されました。

旦那様も実業家でいらっしゃいましたから・・・その結婚がどれだけ重要なものなのか、

病院を大きくするには、それは仕方がない、そう思われたのでしょう・・・・

病弱な娘が、大病院の奥様を務めるのは無理だという判断もあったのかもしれません。

チョンさんからは、何度も、この縁談は受けるつもりはない、お嬢様と約束通り結婚すると連絡されたようですが、

旦那様は、この話は無かったことにして、家のため、自分の将来のため、

そして、娘のためにも、もう連絡はしないで欲しいと・・・・・


実業家として、そして病弱な娘を想う父親としての判断だったと思います」



「でも・・・・それならなぜ、大叔母様は、その人の写真を大事にして、その人を待ち続けていたのですか?」


そうだ・・・・それならなぜ、大叔母様は待ち続けたんだ・・・・


70501.jpg


「お嬢様は・・・・あまりのショックに、心が・・・・壊れてしまわれたのです・・・・・・」





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首と背中をちょっと痛めてしまい、しばらくパソコン作業を控えるよう言われ、

すっかり間が空いてしまいました・・・・

様子を見ながら、書いていけたらな…と思っております。




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とむにーママ

Author:とむにーママ
ユノとチャンミンを心から愛し、東方神起の世界観を大切に、SMファミリーも交えた物語のblogです。恋愛はほぼありませんが、いろんな時代、設定で、どんな言葉が生まれるのか、お楽しみいただければ幸いです。お二人をタローデパリで分析した「秘密の月の部屋」もアメブロで掲載中です。

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